- 2日ぶりに外に出た
- しっかりTVリモコンを見失い、終わりを迎えている
今日見たもの
- 日本テレビ『テレビ報道記者 ニュースをつないだ女たち』
- いわく「日テレ開局70年スペシャルドラマ」とのこと
- まずこのドラマのすごいところは、舞台を架空のテレビ局*1ではなく実在する「日本テレビ」に定めているところ 日テレの放送画面からいきなり「NHKはいいよな～」みたいなセリフが聞こえてきたときにはビックリした そういう設定にしておいて「報道の仕事は尊いのだ！」というお仕事モノにありがちな〈お仕事賛美〉に落ち着くことなく報道という仕事の功罪と業に向き合っているのが感じられた*2 そんな基本的なこともできないのか？って言われがちだし、確かにその通りなんだけど、それこそ本編のことばを借りるなら「まずは1歩」ってことなんだろうな
- 3時間弱という大ボリューム*3にふさわしく、様々なイシューが取り上げられていたのも評価できるポイント 女性記者という立場の弱さに始まり、「他人の不幸で飯を食う」仕事への問題提起、オフもオンもない記者の働き方、真に伝えるべきニュースバリューのありかた、警察とマスコミの力関係、新聞社とテレビ局の力関係、異世代どうしの現実的な付き合い方などなど ジェンダーに関する話題でも、「女性記者への差別」一本槍ではなく、「育休を取るだけで評価される男性に履かされた〈下駄〉」とか「性別違和から転換を行った人物は職場にどう受け入れられるのか」みたいなテーマがストーリー上の必然としてごくごくナチュラルに描かれているのが白眉だった 昔に比べれば著しく進歩している、でも改良の余地はまだまだあるから歩みを止めちゃダメだよねっていうメッセージがフラットに込められていたように思う どんなテーマにせよ、特定の正解を押し付けるのでも思考を放棄するのでもなく、真摯に考え続ける姿勢が見られたのが好印象だった 口で言うのって簡単だけど実際の作品に落とし込むのってめちゃくちゃ難しいので煩型の皆々様におかれましてはそこをもっと評価してほしいなぁ
- さらに、本社にいる記者の仕事がここまで事細かに描かれるんだという点も衝撃ではあった 記者クラブにいたり外回りをしたりする記者だけでなく、局の所謂「報道フロア」にいる報道側のデスクだったり社会部長だったり番組側のデスクの動きが克明に描写されていて、実在のテレビ局を舞台にしている以上こういう描写は〈ノンフィクション〉と捉えないわけにはいかないので、そこに踏み切ったところにも新規性はあるかもと思った*4
- 新入社員あるあるの描写も、もはや定番となった「LINEのメッセージ画面をカメラ画面に埋め込む演出」を通じてガッツリハマっていた ああいう形で自己効力感を削がれる体験、久しくしていないので普通に働きたくね～！！！とはなったね しんど
- もちろん、放送するタイミングがめちゃくちゃ悪いのは事実で、この番組も人が亡くなったきっかけとなる番組も「日本テレビ放送網株式会社」が作ってるんだぞ、っていうのを重要視する人はこの番組を問題視すると思うけど、別にそんなに一枚岩じゃないだろというのが個人的所感ではある*5 総じて言うと、放送するタイミングやかつて日本テレビで起きたことを差し引いても高価値な番組だとは思う
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*2:こういう話題って本気で作らない限り「オレたちの仕事ってすごいでしょ～」という礼賛の路線と、ありきたりなメディア批判を切り張りして作品中のメディア関係者を酷い目に合わせて視聴者に「安い溜飲を下げさせる」路線のものばかりになる気がしていて、そのどちらにも落ち着いていないこの作品は「ちゃんと向き合って作ったんだな」と感じられると思う そういう作品を見抜く自分のリテラシーはまだ信じておきたいな
*3:それ相応のスケール感があり、扱われる事件もオウムに始まり、秋葉原の通り魔事件、東日本大震災、コロナ禍初期の緊急事態宣言時に至るまで多岐にわたる 平成から今までのマスコミ事件報道の総括と言ってもいいくらいの分量だった
*4:特に生々しさを感じたのはSNSの総当たりと電話取材、顔写真の裏取りに至る流れ 異なる3方面からの裏取りを得て初めてOAに乗せるという原則はむべなるかなという感じだったけど、いざ自分が事件を起こしたらこんなに大勢の大人が動くのかと思うとめちゃくちゃ怖かった
*5:「あんな事件を起こした日テレがこんな番組流すな！」って言ってる人が「テレビは事柄を単純化して切り取りがちで～」とか言ってたら流石に引いちゃうけどな 情報の送り手はもちろんだけど、受け手側のリテラシーも試されているだろ！と常々思っている ストレートに自分の意見として発信せずに「こういう考えをする人もいるかもね～」をやりすぎる人はひとまずその考えをしているのは自分かもしれないという主体性に向き合ったほうがいい これは自戒も込めての話
